大魔王の闘病生活

 

 

ある日、人々のあいだにこんな噂が流れました。

「大魔王が病に冒されて寝込んでいる。」

人々は喜びました。

これで働かなくても罰を与えられない

嘘をついても針を飲まなくてよい。

 

人々は働くことをやめました。

一日中、家の中で寝て過ごしました。

 それで幸せでした。

 

やがて秋がおとずれました。

人々はまだ、家の中で寝て過ごしていました。

やがて冬がおとずれました。

人々はまだ、家の中で寝て過ごしていました。

 

ある日、町中の暖房が止まりました。

人々は布団を何重にもして凌ぎました。

 

またある日、食料が無くなりました。

人々は寝ることによってひたすら耐えました。

 

またある日、町で伝染病が流行りました。

人々は苦しみました。

この状況をみかねたように、一人の医師が立ち上がりました。

医師は人々を診察しました。

そして処方箋をかきました。

 

これにつられたかのように、今度は薬剤師が立ち上がりました。

医師が書いた処方箋をみて、薬を調剤しました。

 

一人で薬を飲めない患者さんもいました。

看護師は、患者さんに付っきりで看病しました。

 

伝染病もひと段落ついた頃

医師、薬剤師、看護師は集まって相談しました。

「大魔王の病気を治そう。」

医療人たちは大魔王のもとに向かいました。

 

数日後、大魔王はすっかりよくなりました。

大魔王は医療人たちに感謝しました。

 

人々はまた働きました。

 

 

 

 

 

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